樹脂(プラスチック)材料の特性~金属との使い分けを知ろう!

2021年01月07日(木)

樹脂(プラスチック)材料の特性~金属との使い分けを知ろう!

部品やパーツを作成する際には適した材料を選定する必要があります。これまで金属で作っていた部品やパーツを樹脂(プラスチック)に置き換えることで、製品の高品質化や生産性のアップにつながる場合があります。金属がいいのか?それとも樹脂を選択したほうがいいのか?見極めるためにはそれぞれの材料の特性を把握しておかなければいけません

今回は樹脂の特性について解説します。金属との比較や材料に樹脂を使ったほうが良いケースなどもご説明しますので、材料を選定する際の参考にしてください。

豆知識~そもそも樹脂とプラスチックの違いは?

結論から言うと樹脂もプラスチックも同じものです。プラスチックは石油を原料に造られたポリマーに添加剤を加えて合成した固形物を指します。一方で樹脂はもともと木の油が固まったものを指す言葉です。やがて石油を使った固形物(=プラスチック)も樹脂と呼ぶようになりました。

明確な線引は曖昧ですが、一般的に加工前の原料のことを樹脂、成型品のことをプラスチックと呼ぶケースが多いようです

樹脂の特性を見る上で注目するポイント

樹脂を材料として選定する場合、特に以下のような特性を考慮する必要があります。また、樹脂は分子量や分子構造、使われている添加剤の種類などによって特性に違いがあり、同じ樹脂でも特定の性質を向上させているものもあります。当然、用途や想定される使用環境、必要とされる性能を発揮するためには樹脂ではなく金属を選択したほうが良い場合も考えられます。

以下の5つの性質は、樹脂にするか金属にするか?どの樹脂を選ぶべきか?を見極める基準となります。

機械的性質

機械的性質は物質に力を加えて材料が変形して破壊に至る性質を指します。「外からの物理的な力にどれだけ耐えられるか?」と考えていただけるとわかりやすいです。荷重の大きさ、力が加わっている時間、温度変化や紫外線などによる劣化具合などに左右されます。

特に耐摩耗性や耐疲労性が要求される部品の材料として使用する際には、機械的性質に着目する必要があります。引張強さや伸び、引張弾性率、衝撃強さや硬度などを測定することで、その樹脂の機械的性質を測定することができます。

熱的性質

耐熱性や燃焼性、耐熱膨張性、熱伝導率など熱による変形や損失を表す性質です。一般的に樹脂は金属と比較すると熱伝導率は小さいですが、熱による変形や膨張、燃焼がしやすいという特性があります。

熱が発生する箇所で使用する部品では耐熱性が高い金属を材料として使用したほうが良い場合もあります。一方で熱伝導率が低いので熱を伝えたくない場合は樹脂を選択するケースも考えられます。耐熱性や燃焼性の問題を改善した耐熱プラスチックも開発されているので、使用環境によってはそういった高品質な樹脂を使用することも可能です。

化学的性質

耐化学薬品性、耐ストレスクラッキング性、耐候性などが挙げられます。樹脂が化学物質と接触することで化学変化が起こってひび割れを起こしたり、劣化のスピードが早くなったりするケースがあります。特に化学的性質は薬品の性質(酸性・アルカリ性)によって大きく左右されます。

薬品や液体などが付着することが想定される場合は、該当する化学物質をサンプルとなる樹脂を機械的性質が発生しない状態で1週間程度接触させ、変形や質量などの変化を観測することで使用可否の判定が可能です。

電磁気学的性質

電気的性質とも呼ばれます。絶縁性や誘電性、帯電性など電気の通しやすさや電気の帯びやすさなどが挙げられます。

一般的に樹脂は誘電性が低く絶縁性が高いため、電気を通さないようにする絶縁部品などにもよく用いられます。一方で、ひとたび通電すればそれが留まりやすい性質があるため、帯電防止剤を使用するケースもあります。近年では帯電性を低くした帯電防止性プラスチックという樹脂素材も開発されています

光学的性質

樹脂の大きな特徴として透明で光を通す材料を作れることが挙げられます。身近なものではアクリル板や車のヘッドランプなどが思い浮かびます。光ディスクや光学デバイスの材料としても用いられるほどです。透明性が求められる部品は光の屈折率や耐候性などを測定することで、使用要件を満たしているかどうかを判別できます

ただ、透明性はあっても加工の過程で屈折率が変わるケースも多々あります。特に前述のディスクやデバイスに用いる際には極力複屈折率(光が2つの光線に分けられる率)を低くする必要があります

物理的性質

金属と比較して比重が小さく、軽量であることも樹脂の特徴として挙げられます。一方でどうしても強度や硬度は金属のほうに軍配が上がります。

樹脂部品の比重やロックウェル硬度(押し込んだときの硬さ)、ショア硬度(反発硬さ)を測定することで、その部品が使用に耐えれるだけの物理的性質を持ち合わせているかを判断することが可能です。

比べてわかる!樹脂の特性~金属との比較~

樹脂は金属と並んで部品やパーツによく用いられる素材です。製造現場においては材料に金属を使うか?樹脂を使うか?という選択を迫られるケースは多々あります。

そこで、金属とりわけ材料としてよく用いられる鉄と樹脂の特性の違いをかわりやすく表にまとめましたので、ぜひ素材を選定する際の参考にしてください。

金属(鉄) 樹脂
重量
耐衝撃性
耐摩耗性
耐熱性 ×
非熱伝導性 ×

非電気伝導性

×

寸法の安定性

成形の自由度

着色のしやすさ

樹脂は加工がしやすく、軽量である一方で、金属(鉄)と比較すると衝撃や摩耗、熱には弱い傾向があります。ただし、近年ではそういった弱点を克服した高品質な樹脂も開発されているので、さまざまな分野において金属の代替品として樹脂が使われるケースも多くなってきています

どんな時に樹脂を使うと良い?

弊社でも金属部品やパーツの樹脂への置き換えをご提案させていただくケースがよくあります。その理由として多いのが軽量化と腐食対策。前述のとおり樹脂は金属と比較して軽いため、軽量化が求められている部品やパーツを樹脂に置き換えることで製品の高品質化を図ることが可能です。また、金属はどうしても錆が発生します。耐腐食性が求められる製品の部品やパーツは樹脂の置き換えをご提案することで、製品の耐久性が向上します。

成形や着色といった加工段階での課題も加工性が高い樹脂に置き換えることで解決できるケースがあります。

一方で耐衝撃性や耐摩耗性など強度が要求される、熱や物理的な力での変形を防ぎたいケースでは金属を選択したほうが良い場合があります。

困ったときは専門家に相談

確かに金属部品を樹脂に置き換えることで軽量化や耐腐食性、加工性の向上などのメリットを享受することができます。しかし、すべてのケースで利点があるとは限りません。寧ろデメリットが発生するため樹脂から金属への切り替えをご提案するケースも考えられます。目的や他部品との組み合わせなど総合的に判断して使うべき材料を選定することが重要です

部品やパーツの材料の選定にお悩みでしたら株式会社フカサワにご相談ください。生産プロセス、お客さまの目的やコストなどに応じて豊富なラインナップのなかから適切な素材をご提案し、加工から量産まで、安定的に供給いたします

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