フッ素樹脂加工とは?
特性・用途・テフロンとの違いは?

2023年03月24日(金)

フッ素樹脂加工は私たちの身のまわりのさまざまな製品に使われています。金属やセラミック製品を製造する際にはフッ素樹脂加工を施したほうがいい場合もあります。

今回はフッ素樹脂加工とはどういった加工なのか?どのような製品に使われているのか?といった基礎知識から種類や特性、工程についてご紹介します。この記事を見ればフッ素樹脂加工のことがご理解いただけるはずです。

フッ素樹脂加工とは

フッ素樹脂加工とはその名のとおりフッ素樹脂を金属の表面にコーティングする加工のことです。フッ素樹脂加工を施すことで、高温でも耐えることができるようになる、摩耗しにくくなる、物が付着しにくくなるなど、さまざまなメリットが得られます

フッ素樹脂は専用の下塗り塗料(プライマー)を用いて接着します。フッ素樹脂加工の特性や加工の流れについては後ほど詳しくご説明します。

「テフロン」とは違う?

フッ素樹脂加工のことを「テフロン加工」と呼ぶこともあります。テフロンとはゲマーズ社(旧デュポン社)が開発したポリテトラフルオロエチレンというフッ素樹脂のことを指し、テフロンという言葉は同社によって商標登録されています。したがってテフロン加工はフッ素樹脂加工の一部ではありますが、フッ素樹脂加工=テフロン加工というわけではありません

ゲマーズ社のテフロン加工技術を用いたフライパンが爆発的に売れたため、テフロン加工がフッ素樹脂加工の代表格のような存在になったのです。

そもそもフッ素樹脂とは

フッ素樹脂とはその名の通りフッ素を含むオレフィンを重合して得られる合成樹脂のことを指します。1938年に前述のデュポン社に在籍していたブランケット博士が偶然発見しました。実験に用いる四ふっ化エチレン(TFE)ガスを容器に保存していたのですが、ある日蓋を開けるとガスがなくなっており、容器の内壁に白い粉が付着していました。これが前述のポリテトラフルオロエチレンだったのです。さらに同社は研究を進め、フッ素樹脂の製品化に成功させました。

フッ素樹脂は蛍石という鉱石と硫酸を反応させるとフッ酸が生成されます。フッ酸とクロロホルムを反応させてさらに加熱するとポリテトラフルオロエチレンが生成できます。

フッ素樹脂の種類

フッ素樹脂の代表格は前述のとおりポリテトラフルオロエチレンで、世界シェアの約6割を占めていますが、それ以外にも溶解性に優れたPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、機械的特性に優れたETFE(エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー)、溶解成型が可能なFEP(パーフルオロエチレン-プロペンコポリマー)など、フッ素樹脂にはさまざまな種類があります。フッ素樹脂の種類を以下に一覧表形式でまとめました。

PTFE ポリテトラフルオロエチレン
PFA パーフルオロアルコキシアルカン
ETFE エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー
FEP パーフルオロエチレン-プロペンコポリマー
PVDF ポリフッ化ビニリデン
PCTFE ポリクロロトリフルオロエチレン
ECTFE エチレン-クロロトリフロオロエチレンコポリマー

フッ素樹脂の特性

フッ素樹脂には数多くの機械的特性があり、金属やセラミックスなどの素材を補ってくれます。たとえば鉄でできたフライパンで油を敷かずに肉や魚を焼くとくっついてしまい、焦げ付きも発生します。テフロン加工されたフライパンであればその心配はありません。このように、フッ素樹脂加工を施すことで、さまざまなメリットが得られます。

ここからはフッ素樹脂の特性について見ていきましょう。

耐熱性

耐熱性とは熱にどれくらい耐えられるのか?を示します。フッ素樹脂の耐熱性は非常に高く、たとえばポリテトラフルオロエチレンやパーフルオロアルコキシアルカンであれば260℃程度まで耐えられます

耐薬品性

フッ素樹脂は薬品に対する耐性も高いです。金属は薬品に触れると化学反応を起こしますが、フッ素樹脂加工を施せばそれを防ぐことができます。ポリテトラフルオロエチレンやパーフルオロアルコキシアルカンは酸性やアルカリ性、さらには有機溶剤にも耐えることが可能です。

耐摩耗性

フッ素樹脂は摩擦係数が非常に小さいため、耐摩耗性にも優れています。機械の部品などに用いることで摩耗を防ぐことができ、動きもスムーズになり騒音も抑えることが可能です。ポリテトラフルオロエチレンは摩擦係数が0.1、パーフルオロアルコキシアルカンは0.2です。鉄の摩擦係数は0.52なので、いかに小さいかがわかります。

耐候性

金属は長い間屋外に放置しておくと雨や雪、あるいは空気中の湿気によって腐食してしまい、一般的なプラスチックや樹脂に関しても水や紫外線によって劣化してしまいます。フッ素樹脂は非常に耐候性にも優れ、20年以上屋外に晒しても強度が変化しないとされています

非粘着性

金属や樹脂・プラスチックに粘着性が高い物質が付着するとやがて固化してしまいます。フッ素樹脂は非粘着性が非常に高く、表面が滑りやすいため、物質の定着を防ぐことができます

絶縁性

絶縁性とは電気の通しにくさのことを指します。鉄の誘電率は17.5、アクリル樹脂は2.7~4.5です。一方、ポリテトラフルオロエチレンやパーフルオロアルコキシアルカンは2.1ほどで電気を通しくいため、絶縁体としても活用できます

フッ素樹脂加工の用途

私たちのもっとも身近な製品でフッ素樹脂加工が使われている例としては、やはりフライパンが挙げられます。前述のとおりテフロン加工が施されているフライパンは食材を焼いても付着や焦げ付きがしにくいです。見た目がきれいな料理が作れ、片付けも簡単です。他にも製氷機やアイロン、はさみの刃、芝刈り機などにも用いられています。

他にも各種家電製品や通信機器、製パンや製菓、農産物を加工する装置、自動車や機械の部品、化学メーカーなどで使われる熱交換器や薬液撹拌機など、ありとあらゆる製品にフッ素樹脂加工の技術が活用されているのです。また、小さなボルトやナットから1tを超えるような大型製品まで、サイズ問わず応用することができます。

フッ素樹脂加工の技術がないと、私たちの生活は成り立たないと言っても過言ではありません。

フッ素樹脂加工の工程

金属やセラミックなどの母材にフッ素樹脂加工を施すまでにはさまざまな工程が必要です。大きく分けて「母材預かり・検査」「脱脂」「下地処理」「コート(塗布)」「乾燥」「焼き付け」「検査・再塗装」という流れになります。それぞれの工程について詳しくご説明します。

1.母材預かり・検査

まずはフッ素樹脂加工を施す母材を預かり、数量や状態を確認します。加工条件なども鑑みて依頼通りの加工ができるかどうか?どのような加工を行えばいいのか?といったことを判断します。

2.脱脂

母材表面に付着している油を取り除きます。特に金属はサビ防止に油が塗られていることも多いです。溶剤洗浄などを用いて油を溶かしたり空焼きして油分を焼き払ったりして母材をきれいな状態にします。

3.下地処理

フッ素樹脂が定着しやすいように、研磨剤を打ち付けることで表面に細かい凹凸をつけるブラスト処理や、化学的な処理によって表面に皮膜を形成させる化成処理を行います。また、場合によっては溶解させた金属やセラミックを用いて塗膜を形成させることもあります。

4.コート(塗布)

いよいよフッ素樹脂加工の本丸です。フッ素樹脂が含まれている塗料を母材に塗布します。母材の種類や求める性能によって塗装の回数は変わってきます。複数回塗装を行う場合は、一度乾燥させてから再度塗料を塗布します。

5.乾燥

水性塗料や溶剤性の塗料を用いる場合、コートが完了したら塗料を乾かします。前述のとおり、複数回コートを行う場合は、乾燥後に再度塗装作業を行います。

6.焼き付け

塗料が乾燥したら焼き付けを行います。焼成炉で加熱することで、塗料中に含まれているフッ素樹脂が母材により強固に定着します

7.検査・再塗装

以上の工程がすべて終わったら検査を行います。しっかりと塗装ができているか?塗膜の厚みが適正であるか?を細かく確認し、不備がある場合は再度コート作業からやり直します。検査に合格したら出荷です。

フッ素コーティングとの違い

フッ素樹脂加工と似たようなものとしてフッ素コーティングというものがあります。ともに同じような機械的性質が得られて混同されがちですが、両者には大きな違いがあるのです。フッ素樹脂加工は前章のような工程を経てフッ素樹脂が含まれた塗料を用いて母材を覆います。フッ素コーティングは常温のままで、刷毛やスプレーを用いてフッ素樹脂を母材表面にコーティングします

フッ素コーティングはフッ素樹脂加工と比較して手間やコストがかかりませんが、耐熱性や耐候性はどうしても劣ってしまいます。たとえば高温に晒されるフライパンには不向きです。また、屋外で使用する場合は紫外線でコーティングが劣化するため、1年ほどで再塗装が必要となります。

機械的性質や耐久性を求めるのであれば、フッ素樹脂加工のほうに軍配が上がります

加工・コーティングでお困りなら

フッ素樹脂加工を施すことで、より母材の機械的性質や耐久性、使い勝手が向上します。製品を高温下や屋外下など過酷な環境で使う場合、薬品や粘着物の付着・固化で困っている場合は、フッ素樹脂加工も検討してみましょう

株式会社フカサワではフッ素樹脂加工も承ります。たとえば切削加工や鍛造加工といった一次加工からフッ素樹脂加工を施して出荷するといったような流れでご依頼いただくことも可能です。お客様のご要望をしっかりヒアリングし、適切な加工方法をご提案し、納期どおりに製品をお納めします。ぜひお気軽にご相談ください。

  |  

  • こんなことができます
  • お問合わせフォームはこちら