POM/ジュラコン®の主な加工方法とは?特徴や利用用途まで徹底解説

2023年06月15日(木)

製品や部品の素材として金属から樹脂に置き換えれば、軽量化による性能アップや加工性の向上による業務効率化やコスト削減など、数多くの効果が期待でき、経営上の課題が解決できる可能性もあります
樹脂と一口にいってもさまざまな種類がありますが、POM/ジュラコン®と呼ばれる素材が注目されています。

この記事ではPOM/ジュラコン®の特徴や加工方法、用途や注意点についてご説明します。
特に金属から樹脂への置き換えを考えられている方、樹脂素材を探されている方必見です。

POM/ジュラコン®加工の基礎知識

POMはポリアセタールの略で、エンジニアプラスチックと呼ばれる樹脂素材の一種です
ホルムアルデヒドから合成される樹脂で、米国のデュポン社によって1952年に開発され、1956年にデルリンという商標で市場に出回るようになりました。
ジュラコン®もPOMの一種であり、米国セラニーズ社の商標です。
これらの商標は広く浸透しており、POMをジュラコン®やデルリンと呼ぶ人も少なくありません。

デュポン社のPOMは前述のとおりホルムアルデヒドのみを重合したモノポリマーですが、ジュラコン®はホルムアルデヒドとエチレンオキシドを重合させたコポリマーという違いがあります

POM/ジュラコン®とは何か?

POM/ジュラコン®はエンジニアプラスチック(エンプラ)の一種です。
樹脂は強度や耐熱性によって汎用プラスチック、エンジニアプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)という3種類に分けられます。

エンジニアプラスチックとは、汎用プラスチック、たとえばポリエチレンやポリ塩化ビニルなどの一般的な樹脂素材よりも強度や耐熱性が優れている樹脂素材です。
汎用プラスチックは100℃未満の温度で変形してしまいますが、エンプラは100℃~150℃の高温にも耐えられます

POM/ジュラコン®の特徴と重要性

前述のとおり、POM/ジュラコン®はエンジニアプラスチックであり、優れた耐熱性と機械的強度を有しています。
100℃以上の熱でも耐えられ、破損や劣化がしにくいため、汎用プラスチックでは耐えられない環境下でも、POM/ジュラコン®であれば耐えられる可能性があります
また、耐摩耗性や摺動性にも優れているのも大きな特徴です。

高温になる環境下で使用する製品や力が加わる箇所の部品の素材として利用することができるため、金属から置き換えることで、軽量化や生産性の向上、コストダウンにつながる可能性もあります

エンジニアプラスチックは汎用プラスチックと比較すると高価ですが、その中でもPOM/ジュラコン®は比較的安価で入手することができ、さまざまな分野で活用されています。

POM/ジュラコン®の加工方法と工程

POM/ジュラコン®は非常に加工がしやすい素材です。
加工方法としてはCNCマシンを用いて不要な部分を削ったり切断したりする切削加工と、樹脂を加熱して型に押し出す射出成形加工という2種類があります。

以下ではそれぞれの加工方法の詳細や流れについて見ていきましょう。

CNCマシン(切削加工)による加工方法

切削加工とはドリルや刃物を用いてブロック状あるいは板状の素材を削る、切断する、穴を開けるといった方法で製品や部品を形作る加工方法です。
CNCマシンとはコンピュータで動作を制御する工作機械のことを指します。
あらかじめ移動方向や加工速度などをプログラミングすれば、あとは機械が自動で切削加工を行ってくれます

CNCマシンを用いた加工の流れとしては、まずCADで製品や部品のモデルを作成し、それにもとづいてCAMでCNCマシンの動作を決めます。
さらに、それにもとづいてプログラミングコードを生成します。
コードをCNCマシンに入力し、加工物や工具(刃物やドリルなど)をセットして作動させれば、あとは機械が自動で加工を行ってくれます。

CNCマシンによる切削加工のメリットは複雑形状にも対応できることと、表面精度が高く仕上げられるという点が挙げられます。
特にPOM/ジュラコン®は快削材とも呼ばれ、非常に切削加工と相性がいい素材です
バリが出にくく精度が出しやすく、切削だけでも光沢が出て仕上がりも美しいです。

射出成形(成形加工)による加工方法

射出成形とはペレットと呼ばれる樹脂の粒を熱して溶かし、金型に注入した後に冷却して固化させる加工方法です。
熱して柔らかくなったチョコレートを型に入れると、やがて冷えて固まって型通りのチョコレートが出来上がりますが、射出成形もこれと同じようなイメージです。
POM/ジュラコン®は熱すると柔らかくなり、冷やすと固まるという性質をもつ熱可塑性樹脂であるため、射出成形で製品や部品を形づくることもできます

流れとしては金型を射出成形機にセットし、ホッパと呼ばれるタンクにペレットを入れます。
射出成形機を作動させるとホッパからシリンダにペレットが送られ、加熱された後に金型へ溶けたペレットに圧力をかけながら送り出します。
樹脂が固まったら金型から成形品を取り出して完了です。
なお、射出成形後に切削加工を行うこともあります。

量産がしやすいことと、幅広いサイズの成形品を成形できること、材料のロスがないことが成形加工のメリットです。

POM/ジュラコン®がよく利用される用途

POM/ジュラコン®はポリエチレンやポリプロピレン、ポリ塩化ビニルといった樹脂素材と比較すると、一般の方にとってはあまり馴染みがない素材といえます。
しかし、前述のとおり耐熱性や強度が高いことから、自動車や産業機械、半導体装置、電子機器など、さまざまな製品の部品の素材として使われています。

潤滑性が高く、潤滑油がなくとも滑らかに動くため、歯車や軸受の材料としても使われます。
また、水を吸収しにくい性質があり耐薬品性も高いため、医療装置・器具や食品製造装置の部品の素材としても最適です。

私たちの身近にあるものでは、ブラシの柄、室内の扉やふすまの戸車にPOM/ジュラコン®が使われることがあります。

今回の記事でPOM/ジュラコン®という樹脂素材があることをはじめて知ったという方もいらっしゃるかと思います。
あまり馴染みはないかもしれませんが、私たちの生活を支えてくれている、重要な樹脂素材なのです。

POM/ジュラコン®加工の品質管理と注意点

POM/ジュラコン®は非常に優秀な樹脂素材で、さまざまな用途に使われていますが、弱点がないというわけではありません。
やはり樹脂であるため、耐熱性や機械的強度という点では金属に軍配があがり、完全な代替にはならないというのは事実です

また、これ以外にもPOM/ジュラコン®には品質管理上あるいは加工上の注意点がいくつかあります。
それぞれ見ていきましょう。

品質管理の重要性と手法

POM/ジュラコン®の弱点としてまず挙げられるのは耐候性が低いことです。紫外線や光に当たると変色や変形してしまうため、屋外での使用には不向きです。どうしても使用する場合は安定剤を用いた素材を撰択する必要があります。

耐薬品性が高く有機溶剤やアルカリ性には強いですが、酸には弱いという弱点もあります。そのため酸性の液体が付着する環境下では使用することができません

また、POM/ジュラコン®は耐熱性が高いですが、非常に燃えやすい素材です。
炎が触れる箇所、火気がある場所での使用は危険です

ジュラコン加工における注意すべきポイント

切削性も良く成形加工もしやすいPOM/ジュラコン®ですが、加工上での注意点もいくつかあります。
まずは2つの部材を接着剤でつなぎ合わせる接着加工はできないという点です。
どうしても接着を行う場合は溶接をするか、超音波の力で溶かして接着する超音波接着を行う必要があります。

塗装ができないことにも要注意です。
前述のとおりPOM/ジュラコン®は非常に潤滑性が高い故、塗装をしても塗膜が定着しません。

また、カラーバリエーションが少ないのも難点です。
色は白や黒、青などに限られます。
透明な素材を使いたいという場合やデザイン性を高めたいという場合は、POM/ジュラコン®以外の素材を選択する必要もあるかもしれません。

POM/ジュラコン®加工についてご相談承ります

以上のように弱点や注意点もあるのですが、POM/ジュラコン®は非常に使い勝手が良い優秀な樹脂素材で幅広い製品に使われており、私たちの生活を影で支えてくれている存在です
加工もしやすく、スペックが高いエンジニアプラスチックの中でも安価なのも強みといえます。

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