ポリカーボネート(PC)の成形方法から特性まで網羅解説!

2023年07月07日(金)

「有機ガラス」と呼ばれるほど透明度が高いポリカーボネート(PC)。機械的性質も高く、通称のとおりガラスの代替品としてもよく利用される樹脂素材です。一方で軽量である、加工性が高いなど、樹脂ならではの長所も持ち合わせています。

今回はポリカーボネート(PC)の成形方法や特性について解説し、用途や豆知識についてもご紹介します。ポリカーボネート(PC)について知りたい方はぜひ最後までお読みください。

ポリカーボネート(PC)の成形方法

車樹脂は「成形」という加工工程を経て商品を形づくります。加熱することで柔らかくなる性質がある熱可塑性樹脂の場合は熱して柔らかくなった樹脂を金型に注入して冷却することで、金型どおりの形に固まります。たとえば溶けたチョコレートを星型に入れて冷蔵庫で冷やせば、星型のチョコレートを作ることができますが、これと同じようなイメージです。

ポリカーボネート(PC)も例外ではありません。「射出成形」や「押出成形」という成形方法で加工します。それぞれ詳しく見ていきましょう。

射出成形

射出成形とは熱した樹脂に圧力をかけながら金型の中に注入し、冷却固化して製品を形づくる加工方法です。射出成形機のホッパー(容器)の中に、ペレットと呼ばれる粒状のポリカーボネート(PC)材料を入れます。その後、シリンダーでペレットを熱すると柔らかくなり、それを金型の中に流し込みます。冷却してポリカーボネート(PC)が固まったら金型から取り出し、必要に応じて切削加工などを行い、仕上げをします。

なお、ポリカーボネート(PC)を射出成形する場合、成形前に予備乾燥が必要となり、十分に乾いていない場合は不良が発生する可能性があるため注意が必要です。また、ポリカーボネート(PC)は融点が高いため、300℃くらいまで加熱します。

射出成形は金型を作成すれば同じ成形品を何度も造ることができるため量産に向いていることと、幅広いサイズや形状に対応できるというメリットがあります。一方で金型を製作するコストや時間がかかるのが難点です。

押出成形

押出成形とは加熱して柔らかくなった樹脂を金型に押し出し、その後水や空気で冷却して製品を形づくる加工方法です。ところてんをイメージするとわかりやすいかと思います。ペレットを押出機のホッパーに投入し、ヒーターで加熱します。どろどろに溶けたポリカーボネート(PC)をスクリューで口金と呼ばれる金型に圧力をかけながら送り込むと、口金の形状になったポリカーボネート(PC)が押し出されます。押し出された樹脂は引取機で冷却層に送り出されます。水もしくは空気で冷却した後、引取機を通過し、裁断機で任意の寸法に切断します。

押出成形は断続的に成形加工を行えるため射出成形以上に大量生産に向いていること、長尺の製品が成形できること、金型の製造が安価であることがメリットです。一方で同一断面形状の製品しか成形できないことと、小ロット生産には向いていないこと、切断部分の仕上げ加工が必要になるというデメリットもあります。

ポリカーボネート(PC)の特性

ポリカーボネート(PC)は数ある樹脂の中でも非常に性能が高い素材です。何よりも大きな特徴として透明性が挙げられ、光線透過率は80~90%を誇りガラスやアクリルと比べても遜色ないほどの透明度です。

ABS樹脂の5倍、一般的なアクリル樹脂やポリエチレンの50倍、そしてガラスの200倍という耐衝撃性があり、ハンマーで叩いても割れないほどの強度があります。耐熱性も高く連続使用耐熱温度は120℃であり、しかも自己消火性が備わっているため、仮に燃焼しても燃え広がりにくいです。耐候性も高く、風雨や紫外線にさらされる屋外でもなかなか劣化しません。他にも寸法安定性が高く収縮や膨張などが起きにくい、電気的性質が高く絶縁性に優れているのも特徴です。

一方耐薬品性に関しては酸や塩、アルコールに対して耐久性はあるものの、強アルカリや芳香族炭化水素に対しては弱いという面があります。

弱点もありますが、非常に透明性や強度が高く、熱や紫外線にも耐えられ、寸法も安定しているポリカーボネート(PC)は非常に優れた樹脂素材なのです。

耐衝撃性 耐熱性 耐候性 電気的性質 耐薬品性 寸法安定性
透明
耐衝撃性
耐熱性
耐候性
電気的性質
耐薬品性
寸法安定性
透明

ポリカーボネート(PC)を使った製品

ポリカーボネート(PC)は透明で見た目が美しく、機械的性質も高いことから、私たちの身のまわりのさまざまな製品あるいは部品の素材として採用されています。

携帯電話やスマートフォンの筐体やケース、CD・DVDディスク、デジカメ、液晶パネルなどの電子部品が代表例です。耐候性が高く透明であるためヘッドライトのカバーやバンパー、スピードメーターの板、窓など自動車のパーツにも多用されています。さらには戦闘機のキャノピー(風防)にも使われているくらいです。耐衝撃性に優れることから機動隊員の盾やヘルメット、ゴーグル、カメラレンズの素材としても使われています。

過酷な環境下で使用される製品のパーツ、透明性が求められる部品の素材として、ポリカーボネート(PC)は非常に有用なのです。

ポリカーボネート(PC)を使った部品例

車部品 電子部品 その他
メーター板 携帯電話筐体 カメラレンズ
ヘッドライトカバー CD/DVDディスク 機動隊の盾
窓ガラス デジカメ筐体 ヘルメット

(豆知識)ポリカーボネート(PC)に詳しくなる!

以上でポリカーボネート(PC)の成形方法や用途についてご紹介してきました。私たちにとって身近なものから、過酷な環境下で使われる特殊なものにまで、幅広く使われています。

ポリカーボネート(PC)がどのような素材なのか?を知っておくことで、素材選定時の一つの選択肢が増えるはずです。最後にポリカーボネート(PC)の特徴について見ていきましょう。

そもそもポリカーボネート(PC)とは?

男性ポリカーボネート(PC)は熱を加えると柔らかくなる性質をもつ熱可塑性樹脂の一種です。一方で一般的な樹脂よりも高い耐熱性や強度を有するエンジニアプラスチック(エンプラ)でもあります。軽量で加工性が高いという樹脂のメリットはそのままに、高温に耐えられ、強度もあることから、金属の代替品として使われるケースも多いです。また、透明であり見た目が美しく、かつ破損したときに飛び散らず安全性が高いことから、ガラスの置き換えとしても使われます

ポリカーボネート(PC)はビスフェノールA、ボスゲン、ジュフェニルカーボネートを原料としており、ビスフェノールAとボスゲンを組み合わせるボスゲン法、あるいはビスフェノールAとジュフェニルカーボネートを組み合わせるエステル交換法によって生成されます。また、機械的性質を高めるためABS樹脂やガラス繊維が配合された素材もあります。

ガラスやアクリルに匹敵するほどの透明度で、樹脂でありながらも非常に耐衝撃性、耐熱性、耐候性、電気的性質、寸法安定性が高いのが特徴です。一方で耐薬品性は若干低く、強アルカリや芳香族炭化水素が触れる箇所の使用には向きません

ポリカーボネート(PC)の歴史

西ドイツポリカーボネート(PC)は1956年に当時の西ドイツの化学メーカーであるバイエル社が初めて生産し、58年にはポリカーボネート(PC)製のフィルム、翌59年には成形材料が発売されました。その後、米国のゼネラル・エレクトロニクス社が、60年代には帝人化成が生産を開始し、日本でも普及しだしました。さらに、70年代になると三菱ガス化学、出光石油化学も参入。年間29万トンものポリカーボネート(PC)が生産されました。

一時期環境ホルモンの作用が疑われましたが、食品衛生法の基準も満たしており安全性が高い素材です。先ほどもご紹介したように、ありとあらゆる製品のパーツや部品、あるいは製品そのものの素材として使われていて非常に需要が高いため、今後もポリカーボネート(PC)は安定的に生産され続けていくはずです。

ポリカーボネート(PC)の成形についてご相談承ります

ポリカーボネート(PC)は非常に優れた樹脂素材です。製品のボディや部品、パーツを金属製やガラス製からポリカーボネート(PC)製に置き換えることで軽量化による性能アップや安全性の向上、生産性の改善など、さまざまな効果が得られる可能性があります

ポリカーボネート(PC)の成形や加工は株式会社フカサワにお任せください。弊社は幅広い樹脂素材、金属素材を取り扱い、加工も承っております。素材の選定から設計、成形・加工、検査、納品まで一貫して対応可能です。ねじ・部品の総合商社として創業して80年以上なので、提案力とノウハウが違います。図面がない状態でのご相談や、「こんなものを作りたいんだけど」といった漠然としたご要望に対しても、課題を解決できるようなご提案をさせていただきます

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