金属加工はどんな時に選んだら良い?メリット・デメリットを徹底解説

2021年12月23日(木)

製品や部品・パーツに樹脂ではなく加工した金属を使うことでさまざまなメリットを得ることができます。一方でデメリットもあること、金属種類別に特性が異なることを考慮し、素材選びは慎重に行わなければいけません。

今回は製品や部品・パーツの材質に悩まれている方向けに、金属加工のメリットについてわかりやすく解説。金属を採用したほうがいいケースや特に主流となっている鉄やアルミなどの金属種類別の特徴についてもご説明します。

金属加工のメリット

金属は非常に身近な存在です。身の回りにある製品あるいは部品に金属が採用されていて、金属を見ない、あるいは金属加工品を手にしない日はないと言っても過言ではないでしょう。これほどまでに金属加工が普及した理由は利点が数多くあるからにほかなりません。

まずは金属加工のメリットについて解説していきます。金属には樹脂にはない利点がさまざまあり、適切に活用すれば製品の高品質化や生産性の向上、コストダウンなどが実現できます。

機械的性質が高い

機械的性質とは素材がもつ力学的な特性のことを指します。硬度(硬さ)、引張強さ(引っ張られる力が加わっても破断しない強さ)、耐力(力が加わっても耐えうる力)、耐摩耗性(摩耗しにくさ)、靭性(粘り強さ)などが挙げられます。金属はこれらの機械的性質が非常に高いです。私たち人間が少し力を入れたくらいではびくともせず、もっと力が加わるような場面でも耐えることができます。

強い衝撃や振動、摩擦などの力が加わる箇所では機械的性質が高い金属部品が選択されることが多いです。また、下記の熱処理などの加工を施すことでより機械的性質を高めることもできます。

熱処理が可能

熱処理とは一旦金属を熱して冷却することです。前述のとおり、金属は非常に高い機械的性質をもちますが、熱処理を施すことで金属の組織が変化してより丈夫になります。

金属を加熱した後に急速に冷却することで硬度を高める「焼入れ」、焼入れ後に再度加熱し金属の粘性を高めてひずみを除去する「焼戻し」、金属を一定時間加熱した後に炉に入れたまま徐々に冷却することで金属を柔らかくする「焼なまし」、加熱した金属を空気中で冷ますことで金属組織を安定させる「焼きならし」という4つの熱処理方法があります。

このように熱処理を加えることで、より金属がパワーアップするのです。

金型代が安い傾向にある

金属であれ樹脂であれ素材を形作るためには金型が必要となります。金属の金型は樹脂のそれと比較すると安価に製作できる傾向があります。特に量産品の場合は金型を一度造れば製品単価を下げることも可能です。また、そもそも金属は加工がしやすいため金型が不要なケースも少なくありません。

加えて材料コストに関しても樹脂と比較すると安い傾向があります。金属を採用することで金型代や材料費を抑え、コストダウンを図ることが可能です。

使える加工技術が多い

冒頭のとおり、金属はありとあらゆる製品や部品に使われている素材です。また、紀元前から金属という素材が使われてきたと言われています。広く普及し、歴史も長いことから、さまざまなノウハウが蓄積されていて、多種多様な加工技術が生み出されてきました。

弊社でも刃物を用いて金属を削る・溝や穴を加工する「切削加工」、プレスやロールによって金属を曲げる「曲げ加工」、溶けた金属を鋳型に流し込んで形作る「鋳造加工」をはじめ、多種の加工に対応しています。さまざまな手法を用いて自由自在に成形できるのも金属の大きなアドバンテージです。

磁石が付く

磁石が吸着するのは金属以外にはない特性です。たとえばビス止め、あるいは接着剤やテープの跡などを残したくない箇所や付け外しする機会が多いシーンでは磁石が非常に役に立ちます。代表的なのは黒板です。黒板の表面は金属でできているからこそ、磁石でプリントを貼ったり、文字が印字されたマグネットシールを使ったりすることができます。

金属加工のデメリット

ここまで金属加工のメリットについて解説してきました。加工方法の種類が多く自由に形造れる、機械的性質が高く、過酷な環境に耐えられるなど、さまざまな利点がある夢のような素材ですが、デメリットがないわけではありません。金属を材料として採用する際には弱点に関してもしっかりと把握しておくことが重要です。

特に金属では以下のようなデメリットがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

樹脂に比べ重量がある

金属は樹脂と比較すると比重が大きく、その分だけ重くなってしまいます。金属の中でもっとも普及している鉄は樹脂の6倍、比較的軽量な金属として知られるアルミニウムでも樹脂の2倍もの重量があるのです。製品が重くなることで、持ち運びがしにくくなる、動作や運搬時にエネルギーが必要となる、運搬にコストがかかるなどの弊害が生じます。

機械的性質は金属のほうが勝っていますが、軽量という点では樹脂に軍配が上がります。

一般的に錆びやすい

最大の弱点と言っても良いかもしれません。金属は水と結合することにより錆(腐食)が発生します。鉄は防錆処理をしないとすぐに赤く錆びてしまいます。錆が発生することで美観が悪くなるのはもちろん、強度も低下します。特に年月が経ってボロボロになってしまえば、強度が高い金属であってもかんたんに破壊することができます。

比較的錆びにくいとされているアルミやステンレスに関しても絶対に錆びないということはありません。

成形の自由度は樹脂に比べ低い

さまざまな加工方法がある金属ですが、成形の自由度は樹脂のほうが高いです。金属の機械的性質は大きなメリットである一方で、加工においてはデメリットにもなり得ます。たとえば、工作機械の送り速度はどうしても樹脂と比較すると遅く設定する必要があります。また、刃物の摩耗も早いので、金属を材料として選定した場合加工コストが高くなってしまう可能性もあります。

こんな時は樹脂より金属を選択しよう

金属加工が適している用途・性能金属とならんで樹脂も製品や部品の材料としてよく用いられます。加工の自由度が高く、軽量で錆が発生しないという金属とはまた別の利点が数多くあり、非常に使い勝手が良い素材と言えます。樹脂が材料として適しているケースと金属が適しているケースがあり、使用する場所や用途、求める性能などに応じて適切に選択する必要があります。

ここからは材料として金属を採用したほうが良いケースについて解説します。

耐衝撃性が必要なもの

前述のとおり、金属は非常に機械的性質が高く、樹脂と比較して圧倒的に摩耗しにくい、破断しにくい、伸びに強いといった特性があります。特に強い力がかかる箇所の部品やパーツは金属を選択したほうが得策です。

これまで樹脂を採用していてすぐに破損や変形してしまうなどのトラブルがある場合、金属に置き換えることで解決できる可能性があります。

耐熱性が必要なもの

金属は熱に強いのもメリットです。ABS樹脂やアクリル樹脂、ポリエチレンなど一般的によく使われる樹脂素材の耐熱温度は70℃~100℃程度であり、それ以上の温度になると変形したり溶けたりしてしまいます。

一方でアルミの耐熱温度は400℃、鉄は500℃、ステンレスは1,000℃、タングステンにいたっては融解温度が3,000℃以上となります。高温になる箇所の部品・パーツは圧倒的に金属のほうが適しているのです。

寸法の安定度が必要なもの

樹脂は金属と比較すると耐熱性が低いですが、熱が加わることでひずみが生じるなど変形しやすいのもデメリットとして挙げられます。金属に関しては耐熱性も高く、変形も少ないため寸法精度が安定しています。特に切削加工を行う場合、刃物と素材が摩擦することで熱が生じます。部品など寸法精度が必要とされるものを造る場合は、金属のほうが適しています。

樹脂と金属の使い分けについては「樹脂(プラスチック)材料の特性~金属との使い分けを知ろう!」でも詳しく解説しています。

主な金属種類におけるメリットとデメリット~特性~

金属と一口に言ってもさまざまな種類のものがあり、それぞれ特性も異なります。素材を選定する際には「金属か?樹脂か?」といったことはもちろん、「どの金属を使うか?」ということも考慮しなければいけません。

ここからは代表的な金属素材別に特徴やメリット・デメリットを解説します。

各種金属特性:比較表

アルミ ステンレス チタン
強度 ×
耐熱性 ×
重さ 重い 軽い 重い 軽い
錆びにくさ ×
加工のしやすさ × ×

もっともメジャーな金属素材であり、ありとあらゆるものに使われています。加工がしやすい素材ですが、硬度と耐久性が高く、炭素やその他の金属を混ぜ合わせる(合金)ことでさらに機械的性質を高めることも可能です。

ただし、錆が発生しやすいのがデメリットです。メンテナンスが大変であり、ひとたび錆びてしまうと美観が悪くなり、腐食が進行すると強度が低下してしまいます。そのため、表面処理を行うのが大前提。普段から錆対策を行う必要があります。

アルミ

金属の中ではもっとも軽量であるため、軽量化が求められている製品にも適しています。強度も高く、プラスチックの代替品としても最適です。柔らかく加工がしやすいのもメリットです。また、錆が発生しにくい、見た目がきれい、再利用ができるなど数多くの利点があるため、アルミに関してもさまざまな場所で使われています。

一方で金属の中では比較的変形しやすい、耐熱温度が低いということがデメリットとして挙げられます。

ステンレス

ステンレスは鉄にクロムを混ぜた合金です。英語で表記すると「Stainless Steel」であり、「汚れがない鉄」と訳することができます。その名のとおり、錆が発生することはほとんどありません。シンクに代表されるように、水に濡れる箇所でも採用できる金属です。また、見た目が美しい、耐熱性が高い、保温性に優れているといったメリットもあります。

一方で熱伝導率が低く切削時に熱が逃げにくいことから、加工がしにくいという難点があります。また、電気を通しにくいため通電部品としては使用できません。

チタン

チタンは軽量でありながらも非常に強度が高いのが特徴。鉄と比較すると重量は2/3にも関わらず強度は2倍、アルミニウムに対しては3倍の強さがあると言われています。錆が発生しにくいため、過酷な環境下にも耐えることができます。また、金属アレルギーは錆が原因となっているため、錆びにくいチタンがアクセサリや医療器具などにも使われています。

一方で高価であることと、強度が強いゆえに加工がしにくいというのがデメリットです。

具体的に金属加工の種類はなに?

金属はさまざまな加工方法があることは先ほどもご説明したとおりです。大きく分けると機械で金属を切断したり穴や溝を加工したりする「機械加工」と、圧力を加えて変形させる「塑性加工」、溶解した金属を鋳型に流し込む「鋳造加工」の3種類に分けられます。

さらに、機械加工の中には金属を削る「切削加工」があり、その中にも「旋盤加工」「フライス加工」などの工法があります。塑性加工の中にはプレス機で形造る「プレス加工」があり、さらに「打抜き」「曲げ」などの工法があるなど、多種多様です。

また、金属の性質を変える「熱処理」や「表面処理」も金属加工に含まれます。金属の組織を変質させる熱処理にも前述のとおり「焼入れ」「焼ならし」などの手法があり、金属の表面を変質させる表面処理にも「メッキ処理」「化成処理」といった加工方法があります。

このように、実に多様な加工技術を用いることで、金属をより便利に活用することができるようになるのです。

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